諸般の事情から私は父の住んでいた城東で家族葬による葬儀を行いました。お通夜も行わず、告知もせず、列席者というと近しい身内数人という実にささやかでシンブルなお葬式です。でも、これが実に心温まる葬儀となりました。
たまたま知人が家族葬専門の葬祭場を営んでおり、ふと閃いて予算も含めて相談させていただいていたのですが、これが父の亡くなる2日前のことでした。もう長くはないと感じていたものの、あまりにあっけなく逝ってしまった父。ですが、すでにお願いする所は決まっていて、段取りも出来ていたので、慌てることもなく、見送る準備をする事ができました。
中でも一番印象に残っているのが、葬儀の前夜の様子です。父の亡骸が安置された祭壇の前で、斎場に持ち込んだアルバムの中から、家族みんなで素敵な表情の父の写真を選んだのですが、訪ねてくる人はおらず、やっかいな親族もいないので、幼い甥が騒いでも顰蹙を買うこともなく、実にアットホームな雰囲気の中で父との最後のひと時を過ごすことが出来ました。
あまり幸福な人生とは言えない父の生涯ではありましたが、写真の中の父は笑っているんですね。楽しんでもいるんですね。それまでは、可愛そうな人という気がしていたのですが、あぁ、こういう人生もありなんだと腑に落ちる時間となりました。
今では、この家族葬は、家族一同にとってかけがえのない時間だったと思っています。